David Bowie(デヴィッド・ボウイ)/LIVE AT THE TOKYO DOME 1990 【2CD】

フォーマット:2CD
コンディション(ジャケット/盤):NW/NW
備考:

長らく廃盤状態だった70年代のボウイのカタログがライコから再発されたのが90年1月の事であった。月に3タイトルづつ徐々に再発リリースされるのみならず、各タイトルにレアなボーナストラックが追加収録され古くからのファンが狂喜したのである。またさらに、それまでボウイを「レッツ・ダンス」と「戦メリ」と「ラビリンス」の人としか認識していなかった層にもミュージシャンとしてのボウイをアピールしたのであった。これが90年代幕開けのボウイを巡る日本の状況であった。

ボウイのバック・カタログ再発に先立ち、予告編としてLPサイズのBOXに入った4枚組のベスト盤がリリースされた。4枚目がCDVという、当時リアルタイムで購入した人できちんと視聴出来た人はほとんどいなかったのではないかと思えるフォーマットで、実質3枚組のベスト盤である。しかもこのBOX、単なるベストではなく、かなりレアなトラックがこれでもかというくらいに詰め込まれており、むしろマニアにはそちらの方がメインではないのかと思うくらいで、この後リリースされるボーナス・トラックに期待を持たせるには充分な内容であった。なにせディスク1の1曲目から「Space Oddity」のデモ・トラックというからたまらない。その他、ブートとは比較にならないくらい高音質の「London Bye Ta Ta」、なんとスプリングスティーンのカバー「都会で聖者になるのはたいへんだ」までが収録されていたのである。同曲の裏声と「セイント・イン・ザ・スィ〜〜〜〜〜〜〜ティ」のタメ具合に萌えたボウイ・ファンも多かったのではないだろうか。

この時ボウイはソロ・アーティストではなくティン・マシーンというバンドの一員として活動していた。ボウイにとっては今後ティン・マシーンの活動に軸足を置きたいという意向があり、またちょうど過去のアルバムが再発するというタイミング、これ幸いと、いわゆる「葬式ツアー」を行なう事を決意する。「葬式ツアー」はもちろん正式名称ではないが、このツアーを最後に過去の曲は葬り、今後一切ステージで演奏しない、ついてはファンからリクエストを募る、そのリクエストに沿ってセットリストを決めるということが併せて発表されたのである。もちろん過去の曲はもうステージで演奏しないというボウイの言葉を信じたファンはいなかったと思うが(笑)、ニューアルバムも新曲もリリースせず(「Fame 90」というリミックスのみ)、単に古いカタログを再演するという目的でツアーが発表になったのである。当時のインタビューによれば「古いヒット曲にもう頼ることなく、常に新しいことを行なっていくことが、アーティストとして良いことである」との言葉が残されている。ツアーの名称は前述のBOXが「SOUND + VIDION」と題されていたのに合わせ、SOUND + VISION TOURとされた。

2016年、後に明らかになったボウイ自身の遺言では、「葬儀は行なわず作品だけが残れば良い」とのことであったが、自分の過去の曲を葬るSOUND + VISION TOURは100公演を超える実に盛大な葬儀となった。バンド・メンバーは5人のみ、ステージも全体的に黒を基調とした落ち着いたもので、演出といえばバックにスクリーンが投影されたくらいで、まさか葬儀を意識したものではないだろうが、前回のグラススパイダー・ツアーの派手で演劇的なステージとは対照的な、シンプルかつ歌と演奏に集中したステージであった。日本公演は会場が東京ドームという現在でも最大のスタジアムとあって、1990年5月15日と16日の二日間のみ行なわれた。ところが初日15日は何とボウイが体調を崩し、かなりショート・セットとなってしまい、フルでコンサートを行なったのは5月16日のみという、致し方ない事情とはいえ、初日に行ったファンにとっては何とも消化不良感が残った1990年の来日公演であった。本作が収録しているのは、二日目の1990年5月16日の東京ドーム公演である。

体調不良でショート・セットとなった初日に対し、二日目の5月16日のコンサートは非常に素晴らしいものであった。正式にライヴ・レコーディングされているという意識もあっただろうが、体調不良の翌日収録という悪環境もあっての気力の熱演だったのであろう。実際に本作を聴くと前日体調不良でコンサートを途中で切り上げたとは思えぬ「普通っぷり」で、素晴らしい1990年のボウイの魅力が存分に発揮されている。セットリストは「スペース・オディティ」で開幕し、当時はまだCD化がなされていなかった曲も含め、全25曲のフルセットである。この日のコンサートは前述の通り収録が行なわれており、当時テレビでも放映されたが数曲がカットされた不完全なものであった。しかし本作は流出サウンドボードで完全収録しているのである。しかも、これ以上ないといったクオリティなのである。SOUND + VISION TOURのサウンドボード音源は4公演が残されているが、ミルトンキーンズ公演(『FINISH OFF OLD PHASE』)と並んで定番となるのがこの1990年5月16日東京ドーム公演であろう。

1972年、1978年、1983年、1990年、1996年、2004年と、計6度行なわれたボウイのソロ日本公演は、Heldenレーベルのシリーズで全ての年をこれでカバーすることになる。長きに渡るボウイのキャリアにおいて日本という国が特別な意味を持つのは嬉しい限りだが、ボウイ亡き今、それらは全て過去の想い出になってしまった。我々は新たなボウイを体験することができないのである。しかしボウイの遺言に残された意志に違わず、音楽が残るのは確実であろう。ビートルズが解散後にもファンを増やしているように、ボウイの音楽は新たなファンによって今後も残っていくだろう。そして日本のファンにとっては特別な思い入れのある日本公演で往時を偲んでほしい。本作1990年来日公演5月16日東京ドーム公演を高音質流出サウンドボード音源にて完全収録。美しいピクチャー・ディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。


LIVE AT THE TOKYO DOME May 16, 1990
DISC ONE
01. Space Oddity
02. Changes
03. TVC 15
04. Rebel Rebel
05. Be My Wife
06. Ashes To Ashes
07. Starman
08. Fashion
09. Life On Mars?
10. Blue Jean
11. Let's Dance
12. Stay
13. Band Introduction
14. China Girl

DISC TWO
01. Sound And Vision
02. Ziggy Stardust
03. Station To Station
04. Young Americans
05. Suffragette City
06. Fame
07. "Heroes"
08. Panic In Detroit
09. Pretty Pink Rose
10. Modern Love
11. The Jean Genie
12. Rock'n'Roll Suicide
販売価格 4,800円(税込)
型番 helden/DEN-052/053

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