Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)/LIVE ON BLUEBERRY HILL 1970 【9CD】

フォーマット:9CD
コンディション(ジャケット/盤):NW/NW
備考:

『LIVE ON BLUEBERRY HILL』というタイトルを聴くと、有名なキャッチフレーズ「One hundred and six minutes and fifty three seconds of pure alive rock」の通り、すぐにあの熱い演奏が脳裏に浮かぶ。 1970年9月4日。どれだけ聴いたかわからない名演にして名盤。タイトルとアートワークと内容の三位一体となって構成されるツェッペリン史上最も有名なタイトルとして歴史に刻まれている、 貴方の家にツェッペリンのアイテムが1枚だけあるとしたら、おそらくそれは『ブルーベリーヒル』か『デストロイヤー』であろう。 なにせwikipediaに項目があるくらいなのだから、もはやコレクターの間のみならず一般にまで広く知られているタイトルであるといえる。 Wendyレーベルの最新作は、この『LIVE ON BLUEBERRY HILL』を現存する5種類のソースをそれぞれ個別に収録したタイトルになる。

【1970年夏のUSツアー】
1970年のツェッペリンは今では考えられないくらいのハードなスケジュールでステージをこなしていた。 元々ツェッペリンの名声を支えていたのは全力で行なうステージングであり、実際に臨場したファンの口コミで評価が高まっていったのは間違いない。この年のスケジュールを精査すると、1月にUK、2月から3月にかけて欧州、そして3月から4月は米国とツアーを行なっている。 しかも1969年10月から続いてのものであるから、その過密度が伺いしれよう。そして6月と7月に6公演をこなし、再びこの年2度目となる全米ツアーに出たのが8月から始まったサマー・ツアーである。

ツアーは当初1970年8月5日シンシナティから始まる予定であったが、ジョン・ポール・ジョーンズの父親が病気のため、最初の一週間の予定が繰り延べされ、 8月15日ニューヘブンが初日となった。約一か月の間全米を隈なく回り、その本数は実に25公演を数える。 このツアーは熱狂的な聴衆を前に数多くの伝説的なショウが行なわれたツアーであり、『LIVE ON BLUEBERRY HILL』もその伝説を彩るひとつであろう。 この年から9月4日は我々ツェッペリン・ファンにとって記念すべき日となったのである。 日程的には折り返し地点を少し過ぎたあたりで、その前々日オークランドや前日サンディエゴでも名演が名音源と共に残されており、 榎本喜八が「神の域」に達した二週間のように、ツェッペリンにとってまさに心技体充実した奇跡的な時期であったといえる。

【ロサンゼルス近郊で暗躍するテーパーたち】
『ブルーベリーヒル』は最初期のブートレグのひとつとして挙げられる。 この公演が初めて世に出たのは、KとDという熱心なマニアによって録音された音源である。 この二人の録音はBLIMPというレーベルからリリースされ、その音質の良さと相俟って一躍話題となった。 やはり高音質で有名なローリングストーンズの『LIVER THAN YOU’LL EVER BE』も同じ人物が同じ機材で録音したものだと本人が証言している。 当初BLIMPレーベルでリリースされたものの、後にKとDが新たに創設したレーベルTMOQ名義でも再発されている。

オーディエンス録音草創期より、ロサンゼルスという土地柄は、あのマイク・ミラードが拠点としていたのを筆頭に優秀な録音が数多く輩出されている事で知られている。 それが証拠に、アーティストを問わずロサンゼルス近郊の公演は、ウイングスしかり、フロイドしかり、ストーンズしかり、いつの時代も高音質のオーディエンス録音に恵まれている。 特にこの『LIVE ON BLUEBERRY HILL』に至ってはBlimp/TMOQレーベル以外でも複数の同公演異音源が存在する事が判明しており、実に5ソースが発掘されている。 日本公演などで更に多くのソースが存在する例はあるが、およそ1公演にこれだけ多くのソースが存在する事実にまず驚かされる。 テーパーが当初より商品化を目して録音に臨んだ事、保険のために複数のテープを回していた事、そして数多くのテーパーが暗躍するロサンゼルスという土地柄など、様々な好条件が合致した結果であろう。 このようなテーパーどうしの交流があったのかどうかは知る由もないが、少なからずお互いライバルとして交流はあったであろうし、切磋琢磨して技術の向上を図っていたのではないかと想像する。

【5つのソース】
前述のように1970年9月4日ロサンゼルス公演は現在のところ5つのソースが確認されている。 本作には、それらをソース別に収録している。 ディスク1と2にはソース1が収録されている。これはBLIMP/TMOQで使用されたソースである。若干高音部が荒い感じがするが、なるほど当時リリースされ評判になり、 中には公式リリースと誤解した慌て者がいたという話も納得できるほど高音質である。 特にベースのうなりがしっかり収録されているため、あの独特のグルーヴ感というものを存分に感じる事が出来る。 このソース1は精査するとさらに2種のほぼ隣り合わせで録音したような2つのソースがミックスされている事に気付く。おそらくこれは、自分たちのレーベルでリリースする事を前提として録音に臨んでいたため、 トラブル回避のために同じ席で2つのレコーダーを回していたのであろう。 なにせツェッペリンのコンサートには猛獣使いピーターグラントというコワモテのマネージャーが目を光らせており、 バスフェスではコンサートを録音していたレコーダーを斧で叩き割ったという話が伝わっているくらいである。 なぜコンサートで斧を持っていたのか不思議であるが、仮にそのような事があっても大丈夫なように保険をかけていたのだろう。 便宜上本作ではSOURCE 1aと1bと表記してある。

ディスク3と4はソース2である。モノラルで迫力があり音も近く、こちらも甲乙つけ難い高音質録音である。高域も落ち着いており非常に聴きやすく、 TMOQソースに比べても遜色がない。Empress ValleyレーベルやLast Stand DiscレーベルがTMOQソースとこのソース2を4枚組にして過去にリリースしていたが、なるほど、やはりいずれも捨てがたいものであり、マニアはこの2つは両方所有しておくべきであろう。

ディスク5と6はソース3を収録している。このソースの最大の特長は音の広がりと奥行きがある点であろう。立体的な音像は先の2ソースにはなかったもので、相対的に若干軽めの音ではあるが、こちらも素晴らしい音質である。

ディスク7と8は90年代に入ってから発掘されたものである。高音質ではあるのだが、幾分音像はやや遠い。おそらく初登場公演がこの音質で発掘されれば世間は驚きをもって迎えるのだろうが、他のソースがあまりに高音質なため、 相対的に評価は一歩下がる感は否めない。既発盤では「貴方を愛しつづけて」「強きふたりの愛」「Communication Breakdown」の3曲において、途中で音量レベルが上下する部分があったが、本作ではそれぞれフラットに調整して違和感なきように処理されている。

そして最後ディスク9はソース5として、RUBBER DUBBERレーベルのアナログ盤より収録されている。残念ながらこのソースはテープでは残っていないらしく、既発盤も全てアナログ盤から収録されている。しかし本作は針音を丁寧に除去しており、一聴するとアナログ盤が元になっているとは気付かないくらいクリーンな状態で収録している。

【アートワーク】
『LIVE ON BLUEBERRY HILL』を特徴付ける大きな要素としては秀逸なアートワークが挙げられる。 ブートレグが味気ないビニールから、ジャケットを含めた「作品」に昇格して提示されたのが『LIVE ON BLUEBERRY HILL』が嚆矢であったと言える。 このアートワークもまたTMOQの二人が製作したものである。フロントに裸婦が並んでいるこの絵画は、16世紀末のフォンテーヌブロー派による絵画『ガブリエル・デストレとその姉妹ビヤール公爵夫人とみなされる肖像』(作者不明)が元となっている。 この名画をベースに様々なコラージュを施してジャケットが完成されている。あまりに印象的で優れたデザインであるため、CD時代になっても数多くのタイトルに踏襲されているデザインである。 本作のスリップケースのフロントにはオリジナルのモノトーンで、スリップの中には着色したカラー版があしらわれている。『DESTROYER』と並んで同名異盤が数えきれないタイトルが存在する中で、やはり『LIVE ON BLUEBERRY HILL』といえばこのジャケットでなければしっくりこないという人が多いのではないだろうか。

【セットリスト】
ツェッペリンを後世の歴史的観点で振り返ると1970年は初期に相当し、演出などの都合でセットリストが定型化された後年と異なり、かなり自由度の高いステージであったと言える。 本公演のタイトルの由来となった「Blueberry Hill」もその内のひとつである。アンコールで演奏されたファッツ・ドミノのカバー曲で、本公演の他、前々日オークランド公演でも演奏している事が音源から確認できる。 このようなオールディーズはプラントの趣味であろう。やはりアンコールで演奏される「Out On The Tiles」もまた非常に珍しい選曲である。1973年からは「Black Dog」のキーをとるための前奏としてイントロのみが演奏されているが、 1曲通して演奏したのは本公演でしか音源が残されていない。「LED ZEPPELIN III」に収録されている曲であるが、この時点ではまだリリースされておらず、それどころか、このツアー中にレコーディングが行なわれていたものである。 その他、オープニングの「移民の歌」や「That’s The Way」「貴方を愛しつづけて」「Bron-Yr-Aur」など、これらも観客にとっては未発表曲で、この時に初めて聴く曲であったはずである。

このような未発表曲をリリース前に演奏するというのは、もちろんニュー・アルバムのプロモーションの意図もあるであろうが、さらに加えれば、短期間で2度目の全米ツアーであるため、セットリストに新鮮味を与えたかったのだろう。 前回ツアーでのオープニング「We’re Gonna Groove」が「移民の歌」に変更され、そこから「Heartbreaker」にメドレーで繋がるパターンはこの後長らく固定化される。6月末のバスフェスではまだ未完成でプロトタイプ的な「移民の歌」だったため、わずか数十日でほぼ完成された事になる。

ツェッペリンのライブにおいて「Whole Lotta Love」に次々に挿入される毎晩異なるメドレーがショウのウリになっている。 この日はBoogie Chillun、 Movin’ On, Red House, Some Other Guy,Think It Over, Honey Bee, The Lemon Songという順に演奏されている。 いずれもハードなアレンジでプラントの趣味全快といった選曲である。「Some Other Guy」はビートルズが1962年グラナダテレビ収録で演奏したキャバンクラブでの演奏が有名だが、ビートルズがロックンロールとして演奏していたのに対し、ここでのツェッペリンはハードロックの楽曲として演奏しており、 ビートルズを完全に凌駕した完成度となっている。そしてメドレーは続く「Communication Breakdown」にも挿入されている。 まずはデビュー・アルバムのまさに一曲目を飾る「Good Times Bad Times」である。メドレーにありがちな触りだけといものではなく、充分これで1曲でクレジットしても構わないくらいの長さできちんと演奏されている。 ツェッペリン現役時代はついぞ単独でライブ演奏されることがなかった曲であるが、2007年再結成でオープニング・ナンバーに選ばれたのをご記憶の方も多いだろう。 そして「For What It’s Worth」を挟み、なんとビートルズの「I Saw Her Standing There」を演奏している。もっとも曲名だけ見ると驚かされるが、どちらかといえば歌詞をたどっているというもので、あの勢いある演奏を期待すると肩透かしをくらうだろう。しかし独自の解釈での崩し方もまたカバーの醍醐味である。

【LIVE ON BLUEBERRY HILL】
ツェッペリンのコレクター市場はかなり成熟しており、もはや10年前とは比べ物にならないくらい進化を遂げている。しかしそんな中にあって70年代にリリースされた『LIVE ON BLUEBERRY HILL』は依然として燦然と輝いている。素晴らしい演奏内容、熱い聴衆、高音質録音、三拍子揃った名演にして名音源。 本作には5種のソースを収録しているが、いずれもそれぞれに長点を持った音源で、一概にどれがあれば良いというものではないというのが理解してもらえるだろう。そして音質による特徴の差異は編集によって埋められるものではない。マニアであれば全ソースをそれぞれ所有しておかねばらないと言っても過言ではあるまい。本作はその期待に応える全9枚組のボリュームで、現存するブルーベリーヒル音源を網羅している。いずれも甲乙つけがたい高音質で収録されているため、当時のテーパーの情熱までもが伝わってくるかのようなセットである。美しいピクチャー・ディスク仕様の永久保存がっちりプレス盤。スリップケース付。

THE FORUM INGLEWOOD LOS ANGELES CA USA September 4, 1970
AUDIO SOURCE 1a + 1b
DISC ONE
01. Introduction
02. Immigrant Song
03. Heartbreaker
04. Dazed And Confused
05. Bring It On Home
06. That's The Way
07. Bron-YR-Aur
08. Since I've Been Loving You
09. Organ Solo
10. Thank You

DISC TWO
01. What Is And What Should Never Be
02. Moby Dick
03. Whole Lotta Love
04. Communication Breakdown
05. Out On The Tiles
06. Blueberry Hill

AUDIO SOURCE 2
DISC THREE
01. Introduction
02. Immigrant Song
03. Heartbreaker
04. Dazed And Confused
05. Bring It On Home
06. That's The Way
07. Bron-YR-Aur
08. Since I've Been Loving You
09. Organ Solo
10. Thank You

DISC FOUR
01. What Is And What Should Never Be
02. Moby Dick
03. Whole Lotta Love
04. Communication Breakdown
05. Out On The Tiles
06. Blueberry Hill

AUDIO SOURCE 3
DISC FIVE
01. Introduction
02. Immigrant Song
03. Heartbreaker
04. Dazed And Confused
05. Bring It On Home
06. That's The Way
07. Bron-YR-Aur
08. Since I've Been Loving You
09. Organ Solo
10. Thank You

DISC SIX
01. What Is And What Should Never Be
02. Moby Dick
03. Whole Lotta Love
04. Communication Breakdown
05. Out On The Tiles
06. Blueberry Hill

AUDIO SOURCE 4
DISC SEVEN
01. Introduction
02. Immigrant Song
03. Heartbreaker
04. Dazed And Confused
05. Bring It On Home
06. That's The Way
07. Bron-YR-Aur
08. Since I've Been Loving You
09. Organ Solo
10. Thank You

DISC EIGHT
01. What Is And What Should Never Be
02. Moby Dick
03. Whole Lotta Love
04. Communication Breakdown
05. Out On The Tiles
06. Blueberry Hill

AUDIO SOURCE 5 RUBBER DUBBER Vinyl source
DISC NINE
01. Bring It On Home
02. That’s The Way
03. Bron-YR-Aur
04. Since I’ve Been Loving You
05. Organ Solo
06. Thank You
07. What Is And What Should Never Be
08. Whole Lotta Love
09. Communication Breakdown

販売価格 6,600円(税込)
型番 WENDY/WECD-279-287

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